第一に、現在設計中のハイブリッドロケットの打ち上げに最低限必要な情報を洗い出す。
第二に、今後より大型のロケットを設計する際に必要となる情報もまとめつつ、パラシュートに関する体系的な資料を作成する。
【最低限必要と思われる情報】
最低限の要求を並べるが、担当として他にもどんな課題があるか考えてほしい。
パラシュートの抗力係数を実験せずに概算できる経験式のようなものは存在するのか。
簡単な落下実験で抗力係数を算出することは可能か。
どの程度の高さが最低限必要か。
今回打ち上げる程度のハイブリッドロケットに適当なパラシュートの構造や材料はどのようなものか。
折り畳んだパラシュートの収納にはどの程度のスペースが必要か。
1.ロケットの落下フェーズのシミュレーションにはパラシュートの抗力係数が必要となる(詳しくは後述)。パラシュート担当には抗力係数の算出方法についてまとめてもらいたい。正確な値は実験でしか得られないが、概算方法があるなら設計段階で有効だと思われる。
2.パラシュートを高い所から落下試験を行える環境はまだ確保できていない。試験を行う場合、どの程度の高さを確保する必要があるのかをまとめる。能代では落下試験が義務化された点を考慮すると良い方法を見つけておきたい。
3.今回のハイブリッドロケットの諸元を示す。この程度のロケットに搭載するのに最適なパラシュートを設計製作していただきたい。
諸元 | |
---|---|
機体質量 | 10kg程度 |
打上高度 | 100m程度 |
目標落下速度 | 10m/s程度 |
4.パラシュートの開放機構を設計する上で、パラシュートを収納するのにどの程度のスペースを確保しなければならないのかを明らかにしておかなければならない。
実験場が変わったことから高度制限も予定より低くなり、コロナウイルスの影響で活動に支障が出ているため、当初計画していたパラシュートの二段階化やリーフィング機構の搭載については保留する。まずは一段の簡易なパラシュートを形にしてほしい。自作が困難と判断した場合は市販品(アメリカの業者等が販売している)を使うという判断を下してもらっても構わない。
【シミュレーション担当より】
使用予定のシミュレータ「ForRocket」ではパラシュートに関して以下の項目を入力する必要がある。
Parachute: { |
---|
Timer Mode: false, |
1st Parachute CdS [m2]: 0.3, |
1st Timer [s]: 0.0, |
2nd Parachute Exist: false, |
2nd Parachute CdS [m2]: 0.5, |
2nd Parachute Opening Altitude [m]: 100.0, |
2nd Timer Min [s]: 0.0, |
2nd Timer Max [s]: 0.0} |
また、パラシュート開散後のフェーズにおいて内部では下の計算が行われていることがわかった。
D:抗力 :大気密度 :落下速度(descent velocity) Cd:抗力係数
x:高度 m:質量 g:重力加速度
V:落下速度 :機体の落下速度 :風向風速ベクトル
アメリカの防衛技術情報センターのページで公開されている資料。カリフォルニアのチャイナレイク海軍武器センターというところから出されているみたい。下に引用した手作りロケットマニュアルはおそらくこれをソースに書かれている。
著者であるTheodor W. Knackeさんについてはこのように書かれている。
Theodor W. Knacke is the parachute engineer's engineer.
He has spent a lifetime working in all phases of parachute
パラシュートに一生を捧げた方なのだそうな。しっかり活用させてもらおう。
500ページもある膨大な資料なので全部読むのはきついと思いますから、参考になりそうな部分を挙げておきます。
4.5 EQUILIBRIUM OF FORCES IN STEADY DESCENT OR FLIGHT(69枚目~)
CHAPTER 5 PARACHUTE CHARACTERISTICS AND PERFORMANCE
【手作りロケット完全マニュアルp74~76より】
モデルロケットが空気の抵抗を受けながら落下する場合は実機でいう再突入時の減速体としての力のつり合いから速度を考えることができる。
質量mの飛行方向と垂直方向の飛行体の運動方程式は
抗力と揚力および弾道係数は上記のようにモデルロケット慣性上昇終了後抗力をい受けながらの落下は、実機の場合の高速減速体の考え方があてはまる。抗力と揚力、および弾道係数は、
で式を書き換えると、
モデルロケットの回収は揚力のない弾道軌道と考えると(重力は減速度に比べて十分小さいと仮定)、
抗力と重力がつりあった垂直落下の最終速度は次式になる。
また、大気密度一定とした場合はを使って表す
モデルロケットがインジェクションしてパラシュートを放出し、その抗力によって減速降下している状態を考える。パラシュート降下時の力のつりあい
ただしパラシュート公称直径は、
気流中最大断面面積Spより定義される平均的断面直径は、
実機の場合は無人機器のみの場合9~30m/sec、有人カプセル3~9m/secと回収物によって低速減速体の最終速度が決められている。モデルロケットは毎秒2~5m程度で回収すると機体も破損しないし、人などに対する危険も避けられる。抗力と重力がつりあった垂直落下の最終速度(つりあい落下速度)は次式のようになる、